米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

2020-01-01から1年間の記事一覧

第48話 優しさとは「スクラップ・アンド・ビルド」羽田圭介(文藝春秋社)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 第153回(2015年)芥川賞受賞作品。 あらすじ主人公の田中健斗28歳は、母親とその父に当たる祖父と3人で東京の南西部の集合住宅に住み、失業中ではあるが資格試験の勉強をしながら、就職活動もしている。祖父には5人の子供がいて、その内の1人である…

第47話 東北弁で人生論「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子(河出書房新社)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 第158回(2018年)芥川賞受賞作品。 主人公「桃子さん」こと日高桃子は74歳で、東京オリンピックの年、二十四歳で見合い結婚を結婚式直前に逃げて、東北から上京、仕事先で客として来た男前の「周造」と結婚して二児をなしたが、夫は桃子さんが六…

第46話 日本の現状 世界の現状「サクッとわかるビジネス教養 地政学」奥山真司(新星出版社)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 地政学とは、国の地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考えるアプローチのこと。国の行動には、地理的な要素が深く関わっている。 地政学の最大のメリットは、自国を優位な状況に置きながら、相手国をコントロールするため…

第45話 面接よりも書類選考なのでは「Googleがほしがるスマート脳のつくり方」ウィリアム・バウンドストーン 桃井緑美子訳(青土社)

2⭐️⭐️ 本書はアメリカ合衆国のIT企業Googleの採用面接で問われた問題を集めて解説した本。 人材採用は経歴(学歴、職歴)を経てから、パズルのような問いを課す面接しているとのこと。面接で聞かれるのは算数や数学や物理学に関わるようなのものであったり、…

第44話 プレゼンは準備が肝心「TEDトーク 世界最高のプレゼン術」ジェレミー・ドノバン 中西真雄美訳(新潮社)

3⭐️⭐️⭐️ TEDを初めて知ったのは、NHK Eテレで「スーパープレゼンテーション」という番組だ。ネット社会であるから、インターネットでその番組とTEDが結びついたのか、その番組を見ればTEDというものが存在することが分かるようになっていたのか…

第43話 仏教の優越性「三教指帰」空海 福永光司訳(中公クラシックス)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 本の題名に「ほか」が付いているのは、三教指帰の他に「文鏡秘府論」の「序」が最後に載っているからです。 空海が24歳の時(797年)の最初の著作。時代は平安時代初期で、讃岐(香川県)に生まれ、長岡京で儒教や道教を学んだ後、仏門に入…

第42話 ネット社会以前のテロ事件「テロリストのパラソル」藤原伊織(講談社文庫)

3⭐️⭐️⭐️ 史上初の江戸川乱歩賞&直木賞のW受賞作とあるので期待。「東西ミステリーベスト100 死ぬまで使えるブックガイド。」 文芸春秋 平成25年1月4日発行 で国内編のベスト47位 。 大まかなストーリーは、アル中のバーテンダーの島村は、新宿中…

第41話 凄惨な戦争と生きていく知恵「夜と霧」ヴィクトール・E・フランクル 池田佳代子訳(みすず書房)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 第二次世界大戦では勝ち目のない戦争により日本軍はほぼ全滅しました。日本が軍事同盟を結んでいたドイツもまた日本よりも三ヵ月前に敗れましたが、ドイツや近辺の国々ではユダヤ人迫害のためにアウシュヴィッツ強制収容所とその支社にあたる収…

第40話 評論の大家が語る「モオツァルト・無常という事」小林秀雄(新潮文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 小林秀雄の文章を読んでいると心地が良いのだが、内容が良いものと悪いものがある。 近代批評の確立者と言われたり、評論をダメにしたとか言われたりするが、個性のある文章を書いたに過ぎないと思う。大した内容でもないのに、引き込まれてしまう…

第39話 脳の中に住む「唯脳論」養老孟司(ちくま学芸文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 現代社会は脳が社会に反映されている、いや脳そのものになったという当時としては斬新であったと思われる31年前にあたる平成元年出版の著作。脳と社会に纏わることの証左を様々挙げながら、また特に著者の専門である解剖学の専門的な知識にも及ん…

第38話 マンガでしか語りえぬ「マンガは哲学する」永井均(岩波現代文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 哲学者永井均の本はこれまで何冊か読んで来た。また永井の前には哲学者中島義道にある時期嵌っていて、今でも興味があるが、積読中。つまり哲学のスタートは中島で、その嵌り方はとても尋常ではなく、そして哲学の分野に興味を持つようになった。 …

第37話 翻訳できるくらいの英語力を「英文翻訳術」安西徹雄(ちくま学芸文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 英語の文章を日本語に翻訳するときの、日本人が苦手とする分野を取り上げて適切な訳の選び方が学べる。採用されている英語の文章が比較的難しく、その場で適切に英語に訳せるかと言われると難しいものもあった。今読んでいる英書を一つとっても、…

第36話 普遍的に大切なこと「こころの旅」神谷美恵子(みすず書房)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 神谷美恵子の「生きがいについて」を読み終えたのは2009年6月。読後尋常ではない衝撃を受けたが、兎に角モチベーションがとても上がったことをよく覚えている。読んだ本の中でも重要本ランキングがあるとするならば上位にあると思う。しばらく積読…

第35話 量子力学を学び始める「クオンタムユニバース 量子」 ブライアン・コックス&ジェフ・フォーショー 伊藤文英訳

3⭐️⭐️⭐️ 量子力学の本。全11章とエピローグ。2016年6月20日初版。他人から貰った。 8割位の理解。今現在、新聞ではより新しい事が記事になっていることもあるし、他の宇宙に関する新書の知識もあるからとは、と思っていた。 量子力学も科学技術で応用される…

第34話 記憶の変化と世界の変化が同期する「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)」村上春樹(新潮文庫)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)」を読了。本作の構成は「世界の終わり」の章と「ハードボイルド・ワンダーランド」の章が交互になっていて上巻21章、下巻19章の合わせて40章。全40章の中でも29章(下巻)が一番面白…

第33話 忘れられない怖さ「愛の渇き」三島由紀夫(新潮文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 衝撃的な結末に、驚いたの怖いのなんの。マジかよ、そんなオチかよ。解説によると三島由紀夫の他の作品よりもストーリーが立ってるようです。期待したハッピーエンドじゃないという、まあ面白いと言っても良いか。やはり怖いので読まない方がいい…

第32話 インドを味わう「百年泥」石井遊佳(新潮社)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 芥川賞受賞作。インドで100年に一度の大洪水。主人公は、インドでIT企業の日本語講師。謎に包まれたインドの文化を覗くことができますよ。文章のタッチが滑らかで、面白く書いてあります。笑えて来る。とても楽しめます。謎なのはインドでは飛ぶ人…

第31話 村上春樹ワールドの始まり「風の歌を聴け」村上春樹(講談社文庫)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 村上春樹のデビュー作。偶像新人賞受賞。今や日本一いや世界で名前を知られている村上春樹の処女作。実は高校生の時に買って、途中まで読んで、投げ出していましたが、今回読み切りましたよ、ええ。面白いですねー、自分のフィーリングに合うと…

第30話 村上龍ワールドの始まり「限りなく透明に近いブルー」村上龍(講談社文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 村上龍のデビュー作。偶像新人賞受賞、芥川賞受賞作品。 エロ過ぎる描写、薬物摂取、セックスとドラックの併用、こんな世界ってあるんだー、という感想。暴力もあります。しかも外人との乱交のシーンは圧巻。こんなの見た人、やった人にしか分から…