米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

第40話 評論の大家が語る「モオツァルト・無常という事」小林秀雄(新潮文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️

小林秀雄の文章を読んでいると心地が良いのだが、内容が良いものと悪いものがある。

近代批評の確立者と言われたり、評論をダメにしたとか言われたりするが、個性のある文章を書いたに過ぎないと思う。
大した内容でもないのに、引き込まれてしまう時があるし、全く面白くないのもある。
情報が多いと言われている現代に、もし小林秀雄がいたらどういう文章を書くのかなと思ってしまう。

 

・「モオツァルト」
モオツァルトの伝記を2つに集約している。

モオツァルトは歌劇作者よりシンフォニー作者としての方が立っている。

・「当麻」
(有名な一節)
美しい「花」がある、「花」の美しさという様なものはない。

・「西行
西行は、歌の世界に、人間孤独の観念を新たに導き入れ、これを縦横に歌い切った人である。
西行は和歌が素晴らしく、しかも長命のため多作)

・「実朝」
鎌倉幕府第3代将軍でこちらも和歌が素晴らかったというのは初めて知った。)

・「徒然草
吉田兼好は文章の達人であり、空前絶後であると、(とにかく褒めている。)

・「無常という事」
(著者の心に残った次の文章についての批評。)
「或云、比叡の御社に、いつはりてかんなぎのまねしたるなま女房の、十禅師の御前にて、
夜うち深け、人しづまりて後、ていとうていとうと、つづみをうちて、心すましたる声にて、とてもかくても候、なうなうとうたひけり。
其心を人にしひ問はれて云、生死無常の有様を思うに、此世のことはとてもかくても候。なう後世をたすけ給えと申すなり。云々」

・「平家物語
「盛衰記」と比べると格段の違い。
(「平家物語」の冒頭の神がかり的な素晴らしさ。)

・「蘇我馬子の墓」
石舞台は蘇我馬子の墓
竹内宿禰大和朝廷
愚管抄、日本最初の史論書
聖徳太子「経疏」
要約の出来ぬ美しさの大和三山

・「鉄斎Ⅰ」
富岡鉄斎 南画家 天保7年~大正13年
川端康成の処
鉄斎 酒を呑み、琴を弾きながら何処かへ行ってしまった人である。
気質 文人画家

「八十七歳の時に描かれた山水図を、部屋に掛けて毎日眺めているが、
日本の南画家で此処まで行った人は一人もないと思わざるを得ない。
文人画家気質は愚か、凡そ努力しないでも人間が抱き得る様な気質は、もう一つも現れていない。鍛錬に鍛錬を重ねて創り出した形容を絶したある純一な性格を象徴する自然だけある。」

「万巻の書を読み千里の道を行かずんば画祖となるべからず。」
董其昌の戒律を脇目もふらず遵奉したひとである。

・「鉄斎Ⅱ」
八十九まで元気旺盛にした仕事大器晩成という朦朧たる概念を実演しているようなもの、当人も志は画にないと言っているのだから致し方がない。
琳派
鉄斎は非常な読書家であった。併し、若し彼に画道という芸当がなかったなら、彼の雑然たる知識は、その表現の端緒を掴み得ず、雲散霧消したのではあるまいか。

・「鉄斎Ⅲ」
贋作と富岡鉄斎

・「光悦と宗達
光悦について
岡崎政宗が有名な刀剣である政宗の由来となった人物。本阿弥光悦は偉大な芸術家。宗達は生国も死地もわからず伝説中の人物。

己れを失わずに他人と協力する幸福、和して同じない友情の幸福、そんな事を考える。

幸福は、己れを主張しようともしないし、他人を挑発しようともしない。

・「雪舟
「慧可断臂図」の絵の元になったのは中国人の顔輝

百尺竿頭
「百尺竿頭に一歩を進むべし」
(極地に達したあと、さらになお向上の工夫せよ)

・「偶像崇拝
高野山の赤不動を見てがっかり
・「骨董」
・「真贋」

モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)

モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)