米山隆一郎書評集

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第92話 日本を浮き彫りにして舵を取る「日本経済を学ぶ」岩田規久男(ちくま新書)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

初版は2005年。
岩田規久男ちくま新書『経済学を学ぶ』、『マクロ経済学を学ぶ』、『日本経済を学ぶ』、を「経済3部作」と独自に名付けて、続けて読んだ。読んだ目的は、毎日読んでいる日本経済新聞をより深く理解するため、より世界を知りたいためとシンプルに言えるけれども絶望的に難しいことはわかっている。
1作目「経済学を学ぶ」は経済学とミクロ経済学の基礎理論について、2作目「マクロ経済学を学ぶ」はマクロ経済学の基礎理論について書かれている。
今回読んだ3作目『日本経済を学ぶ』は、第1、2章で戦後復興から高度経済成長を経て、バブル景気から「失われた10年」へ至る2004(平成16)年までの日本経済の歩みについて、第3~7章で、日本的経営とその行方、日本の企業統治、産業政策と規制改革、構造改革と少子・高齢化、日本経済の課題と経済政策、の順に書かれている。

つい先日GDPでドイツに抜かれ世界4位に落ち、昨日あたりの情報によると近々インドに抜かれ世界5位になることが確実視されているようだ。アメリカを抜いて1位になった時、[Japan as no.1]と日本では騒いでいた。そしてまたアメリカに王座を譲ると、そのうち中国にも抜かれ、ドイツにも抜かれ、そして現在に至る。今「失われた30年」という言葉を時々聞くので、2004~2024年の20年間もそれほど日本経済が隆盛しなかったということになる。先日日経平均が史上初40000円を超えたが、バブルの時のような熱気はない。不良債権問題もいつの間にか聞かなくなった。リーマンショックも大きな事象だし、コロナ禍もあった。何といっても人口減少もあるし環境問題もある。

著者を信じてちくま新書の「経済3部作」を読んだのはよい勉強になった。経済学は神の視点から見て、世界は広いと感じさせてくれる。例えば、物理でもモノを点として考える状況があるが、経済学も似ているし、ゲームのプレイヤーのような感じでもある。色々な状況や条件を考えているとき、頭の中に様々な経済の要素を使って世界を構築し、日本を浮き彫りにするのが経済の醍醐味だと思う。現状を把握して日本の経済政策を考え、舵を取って行くのが凄い。

日本経済を学ぶ (ちくま新書)