米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

第38話 マンガでしか語りえぬ「マンガは哲学する」永井均(岩波現代文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️

哲学者永井均の本はこれまで何冊か読んで来た。また永井の前には哲学者中島義道にある時期嵌っていて、今でも興味があるが、積読中。つまり哲学のスタートは中島で、その嵌り方はとても尋常ではなく、そして哲学の分野に興味を持つようになった。

暫くして永井均の存在を知る。この中島と永井の2人はお互いを知っている。中島は偏屈で、永井は正統的という感じ。哲学できるのは才能だと思うし面白そうだと思うけど、歴史に名を残してきたのは、欧米の哲学だし、日本でも独自の哲学はあるが、世界的には枝葉末節なのかなと思う。

さて、本作は、「マンガを哲学する」だが、要するに哲学的問題で、活字ではなく、マンガでしか取り扱えない哲学的問題があるということだ。取り上げられたマンガは、半分位名前を知っているものであったが、知ってるだけでほぼ読んでいないので、本作でマンガの要点が分かりお得な気がした。漫画はもう読めない。子供の頃は、週刊少年ジャンプの黄金期だったが、中学生位から読む嗜好も変わり、今では全然読む気が起こらない。

下記引用、数字はページ数

88 哲学とは、要するに、なぜだか最初から少し哲学的だった人が、本来のまともな人のいる場所へー哲学をすることによってー帰ろうとする運動なのだが、小さな隔たりをうめようとするその運動こそが、おうおうにして深淵をつくりだしてしまうのである。

124 われわれが知っている道徳的な善悪というものは、ごくふつうの状況で、ごくふつうの人がする行動の基準として役立つようにしかできていない。

あとがき 
232 哲学は、他にだれもその存在を感知しない新たな問題をひとりで感知し、だれも知らない対立の一方の側にひとりで立ってひとりで闘うことだからである(この闘いの過程や結果は世の中の多くの人々からは世の中ですでに存在している問題に対する答えの一種と誤解されてしまうのではあるが)。

234私には、現存するある特定のマンガ作品に依存しないではうまく表現できない特殊な哲学的な問いがあったのである。

マンガは哲学する (岩波現代文庫)

マンガは哲学する (岩波現代文庫)

  • 作者:永井 均
  • 発売日: 2009/04/16
  • メディア: 文庫