米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

政治・社会

第87話 正義はどこにあるのか「ザイム真理教」森永卓郎(三五館シンシャ)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 初版2023年。森永卓郎は癌で今年の春の桜が見られないかもしれなかったらしい。まだ存命であるので、少しでも長く生きてほしい。題名のザイム真理教とは、財務省をカルト教団オウム真理教とかけている。財務省は旧大蔵省で、日本の官僚組織のトッ…

第70話 キリスト教世界の父殺しミステリー「カラマーゾフの兄弟1~5」ドストエフスキー亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 亀山郁夫訳「カラマーゾフの兄弟」を長い間積ん読してきたが、遂に全5巻一気に読み終わった。詳細を読み込むと到底一回読むだけでは理解できない膨大で難解な小説。とは言え、大まかなあらすじを追った読み方でも十分に楽しめる。完璧に読み込む…

第59話 資本主義からコミュニズムへ「人新世の資本論」斎藤幸平(集英社新書)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 画期的な本。2021年新書大賞第1位受賞作。 気候変動という人類存続に関わる地球の問題と、資本主義ではごく僅かな富裕層と多くの貧困層に分かれる社会問題と、仕事の多くがブルシット・ジョブ(クソくだらない仕事)であること、などの問題解決…

第58話 困難な格差社会「無理ゲー社会」橘玲(小学館新書)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 1960年代、平和で豊かな時代が続いた中、アメリカ西海岸で「自分らしく生きる」というリベラルな社会の新たなルールが生まれ、世界中に浸透する。そのなかで社会的・経済的に成功したものが評判と性愛を獲得するという困難なゲーム(無理ゲー)を…

第56話 悲観論は全敗「自分の頭で考える日本の論点」出口治明(幻冬舎新書)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 現在における日本社会の問題点を探ろうとし本書を選んだ。「歴史的に見れば、悲観論は全敗しています。」「腹落ちするまで自分の頭で考え、自分なりの答えを選んでいくことで人生は悔いのない、より楽しいものになります。」「イノベーションとは…

第54話 お得な辺境ポジション「日本辺境論」内田樹(新潮新書)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 初版2009年。著者内田樹はこの本の要約を梅棹忠夫の「文明の生態史観」の次のような文章を引用して述べています。 「日本人にも自尊心はあるけれども、その反面、ある種の文化的劣等感がつねにつきまとっている。それは、現に保有している文化水…

第46話 日本の現状 世界の現状「サクッとわかるビジネス教養 地政学」奥山真司(新星出版社)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 地政学とは、国の地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考えるアプローチのこと。国の行動には、地理的な要素が深く関わっている。 地政学の最大のメリットは、自国を優位な状況に置きながら、相手国をコントロールするため…

第22話 世の中の人々の間にある理論「社会学」長谷川公一他(有斐閣)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 社会学がどういう学問なのかという興味関心からこの本を手にした。いつものように思う所を抜き書きしてそれを軸としてこの本を読んだ。抜き書きを改めてまとめて読んでみると、興味深い。ただし、この有斐閣のニューリベラルアーツセレクションシ…