米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

第90話 経済学が腹に落ちる 「経済学を学ぶ」岩田規久男(ちくま新書)

4⭐️⭐️⭐️⭐️

初版は1994年。
日本経済新聞を読んでいて、日頃からもっと深読みしたいなと思っていた。ちくま新書は今から25年位前の学生時代、出版される本はどれも興味を喚起させる書名ばかりで、読みたい本がたくさんあり、実際に何冊か読んではいたが、全然追い付かない状態だった。筑摩書房はいい新書出すと好印象をもてる出版社だった。現在は当時ほど注意して書名をチェックしていないのでわからないが、この本はちくま新書の30年前の経済学の本である。

当時の社会状況は今となっては少し古いが、経済学の内容は古くなく普遍的。この本を読んでみて基本的なことを説明するのに、わかりやすさの点で、この本を超える経済学の本はなかなか無いような気がする。ちなみに、著者岩田規久男ちくま新書の本である「マクロ経済学を学ぶ」「日本経済学を学ぶ」もこれから読む予定だ。何とも贅沢、ハズレの可能性もあるが…。ちなみにちなみに、以前岩田規久男日本銀行副総裁を務めている。

これまで経済の本は数冊読んではいた。しかしこの本のように経済学の初めを言葉の定義から丁寧に経済学の内容を適宜、例を示したり、喩えを用いたりして内容を発展させて説明してくれる本はなかった。既知のことは頭の整理になったし、未知の経済学の特殊な思考を要する部分は、読む速度が異様に落ちたり、止まったりしたが、考えると必ず腹に落ちるように説明されているので、自分に足りない部分を補えるとても良い教科書だと思った。経済学を語れるほどではないので、全体のどのレベルかというのも気になるけどね。

具体的な内容面では、比較優位の原則の所で、職業は1つしかつけないですよ、という説明はとても印象的で、最近自分の力で色々考えて、人が就ける職業って1つだなと気づいたのに、経済学で簡単に説明されている。また、需要(供給)の価格弾力性が大きい(小さい)の説明は、初めて出会った概念で、例に当て嵌めて考えるのにやや時間がかかった。最後に、不完全雇用の方が一般的、というのもそう考えた方が自然だと唸ってしまった。登場した人物はアダム・スミスケインズで、アダム・スミスは「神の見えざる手」と言ったが、彼こそ神だと思う。

経済学を学ぶ (ちくま新書 2)