米山隆一郎書評集

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第44話 プレゼンは準備が肝心「TEDトーク 世界最高のプレゼン術」ジェレミー・ドノバン 中西真雄美訳(新潮社)

3⭐️⭐️⭐️

TEDを初めて知ったのは、NHK Eテレで「スーパープレゼンテーション」という番組だ。
ネット社会であるから、インターネットでその番組とTEDが結びついたのか、その番組を見ればTEDというものが存在することが分かるようになっていたのか、は今となっては忘れてしまった。とにかく、アメリカ合衆国で18分間でプレゼンターが舞台で聴衆に対してプレゼンテーションする。そのプレゼンの内容が面白いし、プレゼン自体がパフォーマンスとなっていて惹きつけられた。とは言え、今となってはTEDのブームは去ったような感じである。何度かスーパープレゼンテーションを観てとても面白いことを話すプレゼンもあったり、あまり興味のない内容であったりした。

このTEDは英語だったことから、英語の学習のためのツールとして使うという向きもあったと思う。また英語学習だけではなく、プレゼンテーションということが、自分の意見や考えを多くの人々に伝えるのに便利な良い方法であるという再認識だ。
以前は発表会と言っていたと思う。
自分の経験では大学での卒業研究の発表会で、プレゼンテーションをした。
発表時間は忘れたが、必死で卒業研究をして、その後に発表もあると知ったときは苦しいなと当時は感じていた。
その卒業研究の発表会は中々上手くできたと思っている。というのも研究室の仲間から最後の質疑応答で笑い取ってた、と言われたからだ。
今も自分がプレゼンテーションをすることは嫌いではないが、プレゼンの練習は絶対に誰でも必要だと思う。

そして、今回読んでみたのが本書である。
「ストーリーをたくさんもちすぎているのが問題」(p16)

よく話す内容がないなとか書く内容がないとか思う事が誰でも子供の頃に国語の授業などで感想を書く時に感じたことがあるのではないかと思う。実際は大人となった今思うことは、話すことも書くことも表現することがないのではなく、あり過ぎて表現できないことなのだとよく思う。しかし、実際は題材はあるけれどもそれを表現できるかということとは別問題だ。

「スピーチのフレームワークとは、聴衆にこれから話す内容を告げる→本論に入る→話した内容をまとめる、構成のこと」(p87、一部改)
「自分の経験や自分の見たものからストーリーを引き出すのがベスト」(p116)

これらは、序論本論結論ということであるし、自分のことしか上手く語れないということだ。これらは両方ともそんなに難しいことではないけれども、表現するということになると準備に時間がかかる。表現ということは難しいのだ。表現という事に関して言うと、最近は俳優やアーティストが相当難易度が高い表現をしているなと強く思うようになった。

「人間の多様性を受け入れることが幸福へのいちばんたしかな道である」(p117)
「聴衆はみんなあなたのプレゼンがうまくいってほしいと思っている」(p203)

本当に人間は多様性に満ちている。色々な人が本当にいる。思いがけない人の様子を見て、「色々な人がいるよね。」と仲の良い人と会話する。
悪口を言ってはいけない。ただ色々な人がいるだけだ。色々な人がいるということを知ると幸福になれる。
また、プレゼンに於いてはみんなプレゼンターがうまくいってほしいと思っている、とあるが色々な人がいる中でみんなそう思うものだろうか。
そういう人が多いことを願いたい。それは映画を見ることに近いような気がする。いい映画であってほしいと。プレゼンテーションは一つのショーなのだ。