米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

第42話 ネット社会以前のテロ事件「テロリストのパラソル」藤原伊織(講談社文庫)

3⭐️⭐️⭐️ 史上初の江戸川乱歩賞&直木賞のW受賞作とあるので期待。「東西ミステリーベスト100 死ぬまで使えるブックガイド。」 文芸春秋 平成25年1月4日発行 で国内編のベスト47位 。 大まかなストーリーは、アル中のバーテンダーの島村は、新宿中…

第41話 凄惨な戦争と生きていく知恵「夜と霧」ヴィクトール・E・フランクル 池田佳代子訳(みすず書房)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 第二次世界大戦では勝ち目のない戦争により日本軍はほぼ全滅しました。日本が軍事同盟を結んでいたドイツもまた日本よりも三ヵ月前に敗れましたが、ドイツや近辺の国々ではユダヤ人迫害のためにアウシュヴィッツ強制収容所とその支社にあたる収…

第40話 評論の大家が語る「モオツァルト・無常という事」小林秀雄(新潮文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 小林秀雄の文章を読んでいると心地が良いのだが、内容が良いものと悪いものがある。 近代批評の確立者と言われたり、評論をダメにしたとか言われたりするが、個性のある文章を書いたに過ぎないと思う。大した内容でもないのに、引き込まれてしまう…

第39話 脳の中に住む「唯脳論」養老孟司(ちくま学芸文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 現代社会は脳が社会に反映されている、いや脳そのものになったという当時としては斬新であったと思われる31年前にあたる平成元年出版の著作。脳と社会に纏わることの証左を様々挙げながら、また特に著者の専門である解剖学の専門的な知識にも及ん…