米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

第34話 記憶の変化と世界の変化が同期する「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)」村上春樹(新潮文庫)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)」を読了。本作の構成は「世界の終わり」の章と「ハードボイルド・ワンダーランド」の章が交互になっていて上巻21章、下巻19章の合わせて40章。全40章の中でも29章(下巻)が一番面白…

第33話 忘れられない怖さ「愛の渇き」三島由紀夫(新潮文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 衝撃的な結末に、驚いたの怖いのなんの。マジかよ、そんなオチかよ。解説によると三島由紀夫の他の作品よりもストーリーが立ってるようです。期待したハッピーエンドじゃないという、まあ面白いと言っても良いか。やはり怖いので読まない方がいい…

第32話 インドを味わう「百年泥」石井遊佳(新潮社)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 芥川賞受賞作。インドで100年に一度の大洪水。主人公は、インドでIT企業の日本語講師。謎に包まれたインドの文化を覗くことができますよ。文章のタッチが滑らかで、面白く書いてあります。笑えて来る。とても楽しめます。謎なのはインドでは飛ぶ人…

第31話 村上春樹ワールドの始まり「風の歌を聴け」村上春樹(講談社文庫)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 村上春樹のデビュー作。偶像新人賞受賞。今や日本一いや世界で名前を知られている村上春樹の処女作。実は高校生の時に買って、途中まで読んで、投げ出していましたが、今回読み切りましたよ、ええ。面白いですねー、自分のフィーリングに合うと…

第30話 村上龍ワールドの始まり「限りなく透明に近いブルー」村上龍(講談社文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 村上龍のデビュー作。偶像新人賞受賞、芥川賞受賞作品。 エロ過ぎる描写、薬物摂取、セックスとドラックの併用、こんな世界ってあるんだー、という感想。暴力もあります。しかも外人との乱交のシーンは圧巻。こんなの見た人、やった人にしか分から…

第29話 ロボット工学三原則「われはロボット」アイザック・アシモフ(ハヤカワ文庫SF)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ AIのトピックが声高に語られるようになり、それと同時にこの本の冒頭にある、ロボット工学三原則もAI時代にふさわしい原則として頻繁に取り上げられることが多くなってきた。この原則は小説家アイザック・アシモフが考えたものであるが、彼のロボ…

第28話 好きなことしかやらない「からだの見方」養老孟司(ちくま文庫)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 「見方」三部作の前二作は口述だったせいか、重みを感じなかったが、本作は丁寧に書かれている。サントリー学術賞をとったこともあり、読み応えがある。 本作で大切だと思ったのは、下記に引用したことにもある通り、好きなことをやる、それより…

第27話 自分は主体的ではない「寝ながら学べる構造主義」内田樹(文春新書)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 名著としてこの本は名高い。以前から気になっていたところ、読んでみて深い知見に感動した。この本の引用(下記参照)の多さから、新しいことをかなり多く学んだし、既知の知識も整理された。しかもその内容も著者の力が無ければ、わからないま…

第26話 ソシュール批判の書「国語学原論(上)(下)(続篇)」時枝誠記(岩波文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 古い書物で、慣れない用語もあるし、わかりづらい。この本の主張は、言語の本質である主体性に迫りながら、ソシュールの説を言語論として批判していることに尽きる。その本質に迫る立場を言語過程説と呼んでいる。 「(上)p26言語研究の究極の課…

第25話 楽して英語は身につかない「めざせ達人!英語道場」斎藤兆史(ちくま新書)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 再読。斎藤兆史先生の本はこれまで新書で4冊読んできた。英語達人の本、英語達人になる本、教養についての本、努力についての本、今回紹介する本はまたも英語達人になる本である。そして、忘れていたがとても大事なことが書かれていて、ハッと目…

第24話 足並みをそろえる社会「コンビニ人間」村田沙耶香(文藝春秋)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 小谷野敦という評論家が、歴代の芥川賞受賞作の中でこの「コンビニ人間」が一番面白い作品と自身の歴代芥川賞作品の偏差値をつけた本で書いている。たまたま村田氏を映像で見たとき、変わった人であることは確かだという印象を受けた。また、新…

第23話 数学心得「いかにして問題をとくか」G.ポリア(丸善出版)

4⭐️⭐️⭐️⭐️数学の問題を解くときの方法論や心構えが書かれている。有益な情報が書かれており、本を通してなるほどという箇所が多く、とても参考になる。とりわけ大学受験の数学に取り組む時に効果がありそう。 下記引用 数字はページ数 14 ・問題が解けなかっ…

第22話 世の中の人々の間にある理論「社会学」長谷川公一他(有斐閣)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 社会学がどういう学問なのかという興味関心からこの本を手にした。いつものように思う所を抜き書きしてそれを軸としてこの本を読んだ。抜き書きを改めてまとめて読んでみると、興味深い。ただし、この有斐閣のニューリベラルアーツセレクションシ…

第21話 振り回されない力「FACTFULNESS」ハンス・ロスリング他(日経BP社)

3⭐️⭐️⭐️ 人が陥りやすいバイアスや思い込みについて書いてある本で、ほとんど知っていることであった。 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロ…

第20話 110歳まで生きるようにして100歳 「LIFE SHIFT」リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット(東洋経済新報社)

2⭐️⭐️ 内容ほぼわかってたのに、ブックオフで購入して、流し読みです。人生が100年になるということに伴ってどういう世界になるかということです。 LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 作者: リンダグラットン,アンドリュースコット,池村千秋 出版社/メーカー: 東洋…

第19話 インプット多くない方が良い説「脳の見方」養老孟司(ちくま文庫)

3⭐️⭐️⭐️ 見方三部作で二作目の本作品。Ⅴ綺想 の章が養老先生の生活について養老節が炸裂していて面白く読めた。ⅠからⅣは出版当時はどうだったか分からないが、でもそれを考慮しても凡庸な語り口でそれほど面白くないと思う。専門分野では個人的にはⅥの、発生…

第18話 一所懸命やる以外にやりようがない「ヒトの見方」養老孟司(ちくま文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 私の好きな養老孟司による古い本で、結構長い間積ん読していたが読了した。特に解剖学的な専門知識を必要とするところは飛ばして読んだ。そんな中でも名言に出会う。下記引用 P65「物事をとことん理解するのは、ことほどさように大変である」 P68…

第17話 山門のことば

第16話 家ができる過程

第15話 ゆっくりと曖昧に失敗を恐れず「できない脳ほど自信過剰」池谷裕二(朝日新聞出版)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ パテカトルの万能薬、第2弾、こちらも長い間積読してました。下記にあるように自分なりのポイント12点。 1、できない人ほど自分はできると勘違いしている傾向。これをダニング=クルーガー効果という。しかし能力の低い人でも訓練で、スキル不足に…

第14話 脳細胞は減らない「脳はなにげに不公平」池谷裕二(朝日新聞出版)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ パテカトルの万能薬は週刊朝日に連載されている時、毎週読んでいたけれども、今でも連載が続いているのかなという疑問がある。この本初版本で購入し、長い期間積読していたけれどもついに読了。この本の前に読んだ、ココロの盲点と被っている内容…

第13話 テストは有効、記憶力は衰えない「自分では気づかない、ココロの盲点」池谷裕二(講談社ブルーバックス)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 池谷裕二先生の著作は面白く、欠かさず読むというここ最近の傾向。積読している期間が長かったけれども、ついに読んだよ、この作品。心理学を齧った経験もあることから、慣れ親しんだ効果ばかり。心理学と経済学が合わさった行動経済学も脚光を浴…

第12話 ゲームの達人「Master of the GAME」(SIDNEY SHELDON)

3⭐️⭐️⭐️ 洋書第3弾。理解率60%位、後半理解率落ちて、分かりやすい所と、衝撃的な所を中心に読み進めた。分からなくなっても読むのをやめなかったけれども、それが頻発して内容を掴みきれなかった。英単語の意味が分かれば劇的に改善することは分かるけれど…

第11話 歴史のある有り難さ「Reading and Writing」(V.S.Naipaul)

3⭐️⭐️⭐️ 洋書2冊目。 短い本でした。2編ある。理解度は90%位。 1編目が2、3箇所ページが抜けていました。 印象に残ったのは、インド人には自国の歴史がないという認識なんだということと、日本は歴史があって文学の厚みがあり、かつ外国語の文学が翻訳されて…

第10話 穴「HOLES」(Louis Sachar ルイス・サッカー)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ まず洋書で読みました。 182ページまで読んだけど、分からなくなったので、最初から読み直した。 2回目は意味のまとまりを意識して読んだら最後まで読み切った。分からない単語は調べないで読むことにしたが、どうしても分からない単語は出てくる…

第9話 意味の塊を掴んで多読「快読100万語!ペーパーバックへの道」酒井邦秀(ちくま学芸文庫)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ ペーパーバックを読むために「わからないところを飛ばす」「辞書は引かない」「和訳しない」「進まなくなったらただちにやめて次の本に手を出す」 実際読む時に、意識することで大事なことは、長文に見える文も、短い「意味のかたまり」の連続とい…

第8話 好きこそものの上手なれ「好きなようにしてください」楠木建(ダイヤモンド社)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 主に仕事にまつわることに関して、好きなようにするを切り口にとてもバランスの取れた有効な考え方を提示してくれている。とりわけ無努力主義の原則は好きこそものの上手なれであり、努力しようと思った時点でもう向いていないのだ。 好きなよう…

第7話 シンプルに考える「「好き嫌い」と経営」楠木建(東洋経済新報社)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 楠木建にハマり出してここまで来た。そして今回著名な経営者たちの好き嫌いを抉り出すというコンセプトで対談集になっている。彼らの胸に響く言葉は以下に引用したが、その中でも出口治明の言葉に意表を突かれ、その深い言葉に感銘を受けた。 【…

第6話 面白がる・読書コスパ最強・ブレない「戦略読書日記」楠木建(プレジデント社)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ 本書は 楠木建の前作「ストーリーとしての競争戦略」の内容を書評で具体化するというコンセプトです。文章はゴツゴツしているけれども、内容はとても良かったです。 本人が面白がっていること。自分で心底面白くなければ、人がついてくるわけがな…

第5話 問題の絞り込み「イシューからはじめよ」安宅和人(英治出版)

4⭐️⭐️⭐️⭐️ この本で犬の道とは、問題の発見に膨大な手数を必要とする方法。しかし、イシュー(問題)の絞り込みをすることで時間と労力が大幅に減らすことができるということがこの本の趣旨である。 他に仮説通りは計測、反する場合は発見のフェルミの言葉が印…