米山隆一郎書評集

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第87話 正義はどこにあるのか「ザイム真理教」森永卓郎(三五館シンシャ)

4⭐️⭐️⭐️⭐️

初版2023年。
森永卓郎は癌で今年の春の桜が見られないかもしれなかったらしい。まだ存命であるので、少しでも長く生きてほしい。

題名のザイム真理教とは、財務省カルト教団オウム真理教とかけている。財務省は旧大蔵省で、日本の官僚組織のトップ集団である。

この本に通底している考え方は、「財政均衡主義」。
税収範囲内で財政支出をしなければならないという理念は、われわれの暮らしになぞらえると、至極当然のことだと理解しやすいからだ。しかし、国全体の財政、特に自国通貨を持つ国の財政にとって、「財政均衡主義」は誤っているどころか、大きな弊害をもたらす政策だ(p4)、というもの。

森永は、「p23(財務省の人間は、)ずっと周りの人から、チヤホヤされて、自分の一言で、思い通りに人が動く経験を重ねていくと、やがて人間は、全知全能の神であると勘違いしてしまう。そこにザイム真理教の源流があるのだ。」と言う。
→人間は傲慢になる性質がある。

財務省は消費税増税にこだわる。
財務省にとって税収が増えることは、収入が増えることに直結している。

財務省にとって、安倍政権ほど素晴らしい政権はないとも言えます。結局、消費税を二度増税し、経済成長で税収も増やしたわけですから。(p117)
→消費税は迷惑な存在であると、庶民はもっと主張してよいはず。

なぜ日本は30年間成長できなかったのか。
日本経済が成長できなくなった最大の理由は「急激な増税社会保険料アップで手取り収入が減ってしまったから」だ。
使えるお金が減れば、消費が落ちる。消費が落ちれば、企業の売上げが減る。そのため企業は人件費を削減せざるを得なくなる……という悪循環が続いたのだ。
ザイム真理教は、国民生活どころか、日本経済まで破壊してしまったのだ。(p135)
→失われた30年ということをよく耳にするが、要するに税によって人々の収入が落ち込みお金の巡りが悪くなって、最終的に日本経済は低迷が続いた。

もっと公平な税制を作ろうと思うのであれば、消費税を廃止し、税制の特例を廃止し、すべての所得を総合課税することが望ましいことは明らかだ。(p166)
カルト教団の多くでは、富裕層やエリート層が、一般信者と異なる待遇を与えられるのはよくある話だ。ザイム真理教でもその構造はまったく同じだ。庶民は教団の集金のターゲットとしてしか扱われない。(同上)
→消費税を廃止し、総合課税を導入する。不平等な世界を変革し、公正な世界を築こう。


消費税を廃止し、税制を改革することが大事。財務省は官僚のトップ機関であることを利用して政治家を操り、国民に重い税負担をかけ結果的に国が30年間低迷することになった。構造的に改善しにくい国の機関運営の現状。
これらのことは、今まで多くの人が分からず、また権力に逆らう構図であるので言い出しにくいことでもあったと思う。しかし、森永卓郎が勇気をもって難しくて見通せない現状を分析し、この本の出版に漕ぎ着けたことは称賛に価する。

ザイム真理教