米山隆一郎書評集

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第58話 困難な格差社会「無理ゲー社会」橘玲(小学館新書)

4⭐️⭐️⭐️⭐️

1960年代、平和で豊かな時代が続いた中、アメリカ西海岸で「自分らしく生きる」というリベラルな社会の新たなルールが生まれ、世界中に浸透する。そのなかで社会的・経済的に成功したものが評判と性愛を獲得するという困難なゲーム(無理ゲー)を一人で攻略しなければならない。誰もが知能と努力で成功できるという建前ではあるが、上下の格差が大きくなった社会が生まれている。

[無理ゲー社会とは超格差社会のこと]

この本で描かれている無理ゲー社会とは大きく広がった格差社会のこと。昔から格差は存在しているけれども、現在はその格差が上下で大きく開いている。ここでは格差として知能格差社会、経済格差、性愛格差としてそれぞれ取り上げられている。

まず知能格差社会では、「能力主義」と訳すメリトクラシーを中心に、その背景として「教育によって学力はいくらでも向上する」「努力すればどんな夢でも叶う」という信念がある。これらの考えは「リベラルな社会」を成り立たせる最大の神話となっているけれども、不平等の原因として是正措置が検討されている。最近話題となった遺伝ガチャという言葉だが、昔から遺伝ガチャだとは思うものの、ここでは多くの日本人は日本語読解力が低いことを指摘されている。

次に、経済格差ではアメリカの白人の大卒と非大卒とを比較して、非大卒の自殺の多さを取り上げ、特にアメリカでは学歴によっては経済的な苦境に陥ることが分かる。日本における非大卒の経済的苦境と、非大卒が教育に期待しなくなってしまったことを挙げられている。

最後に、性愛格差として、男が競争し、女が選択する、という状況の中アルファと呼ばれる社会的・経済的地位の高い男に圧倒的に優位な恋愛市場となっていること、貧乏な男はモテないという現実が描かれている。