米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

第86話 歴史小説から人生を学ぶ 「教養としての歴史小説」今村翔吾(ダイヤモンド社)

4⭐️⭐️⭐️⭐️

初版2023年。
歴史小説家による歴史小説を教養として読むことを勧める本。
著者今村翔吾は小学生5年の時に池波正太郎の「真田太平記」を読み始めてから、歴史小説を読むことが好きになり、多くの歴史小説を読み、その経験を生かして歴史小説家になった。この本では時代小説を歴史小説に含め、歴史小説の歴史にあたるものを太平洋戦争までとしている。著者は独自に、歴代の歴史小説家を7世代に分けていて面白い。また、歴史小説の人気を一気に押し上げたのは、「一平二太郎(藤沢周平司馬遼太郎池波正太郎)」と記している。

歴史小説は偉人の成し遂げた業績や行動を小説の主人公に成り切って再体験できるから面白く、大きな業績を残した人、自分の目指すところと同じ様な人、自分が専門とすることと重なる人と言った自分と重ねられる部分がある人物の作品を読むと気分が良いと思う。歴史小説はポジティブなものである。紹介されている本で以前から読みたいと思っていた歴史小説もあるので、時間をみつけて読もうと思う。

歴史小説と言えば個人的な話だと、中学生になった時に周囲の者がやたらと吉川英治を読んでいて自分も読もうということで「三国志」と「宮本武蔵」を読んだ。2作品ともとても面白くて、「三国志」は後で多くの場面で大いに役立ったのでこの時読んでおいて良かったと思うし、「宮本武蔵」は影響を受けすぎて強くならねばと部活動に励むことになった。

宮本武蔵」を読んでいる時、その時親しくしていた者が「自分は(山岡荘八の)『徳川家康』を読んでいる」と言っていたのを思い出し、大人になってから『徳川家康』を古本屋で少しずつ集めた。しかし全く読んでいないので完全なる積読状態で所有している。今村翔吾は『徳川家康』をお薦めの10冊に挙げているので(この本の中の、ビジネスで役立つ歴史小説の5冊にも含まれている)積読解消したい。絶対に得られることが多いはずだ。

立川談志は生前に自分の弟子の入門には必読と言っていたらしい吉川英治「新平家物語」も蒐集したもののこちらも1巻の途中で積読状態。

司馬遼太郎の「竜馬がゆく」「坂の上の雲」「胡蝶の夢」は読んだ。「竜馬がゆく」はとても面白い。司馬遼太郎の作品も積読が多いし、読みたいのも多い。

藤沢周平の「蝉しぐれ」も冒頭だけ読んで積読だ。山田洋次監督、真田広之主演の「たそがれ清兵衛」は映画で観た。ちなみに今村翔吾は、この本で「p122 私が美しい日本語で書かれている歴史小説」に挙げたいのは、『溟い海』(藤沢周平著)、『樅ノ木は残った』(山本周五郎著)、『敦煌』(井上靖著)といった作品です。」と書いている。

私の地元が池波正太郎のゆかりの地で、池波正太郎が最初に入学した小学校は私と同じで先輩にあたる。その後池波正太郎は両親が離婚して区内の別の小学校に転校した。学歴は小学校卒業。作品で読んだことがあるのは2007年読了の「男の系譜」のみだが、最近図書館の池波正太郎のコーナーで全集のようなものの冒頭を読んだら、武田信玄が描かれている場面で作品名は確認していないが、その部分だけでも面白かった。

概して歴史小説の大家は遺した本の量が多い感じを受ける。吉川英治の遺した本の量は多いし、司馬遼太郎も多く、池波正太郎も多い。楽しむ余地は沢山あって、時間が足りない。

教養としての歴史小説