米山隆一郎書評集

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第72話 お笑い芸人の人生と目を見張るオチ 「火花」又吉直樹(文藝春秋)

4⭐️⭐️⭐️⭐️

お笑い芸人又吉直樹による第153回芥川賞受賞作品。

主人公のお笑い芸人徳永と彼が尊敬する先輩芸人神谷とのお笑いに捧げた人生とそのやりとりが文学作品に落とし込められている。

時々クスっと笑ってしまう徳永と神谷のやりとり、お笑い芸人というのは日常的に笑いで人生を豊かにしようという気持ちが常に働いているのが伝わる。

芸人の世界も競争社会。面白い芸人が人気を博し、売れて行く。

漫才は言葉が武器だ。漫才ブームの時のお笑いは爆笑を引き起こしたが、現代の爆笑が少ないと言われる世代のお笑いはどういうものなのか。果たして文学とお笑いは融合できるのか。

単調な展開だったが、起承転結の結であるオチが秀逸に感じたので、良かったと思う。芥川賞の女性選評委員はオチがこうだからダメと言っていたが、男性読者は楽しいと思うオチである。