米山隆一郎書評集

読書記録を楽しむ

第2話 面白い話を考える「ストーリーとしての競争戦略」楠木建(東洋経済新聞社)

5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

楠木建を知ったのはラジオ文化放送の早朝の番組で、週に1回ゲストととして出演していたとき。話が面白く魅力溢れる人。

社会に左右されずに自分の考えに重きを置き、思い描いた人生のストーリーに忠実に生きる

競争戦略の第一の本質は他者との違いをつくること。何をやり、何をやらないか、を決める。ひたすら回し続けていると、少しずつ勢いがついていき、やがて考えられないほど回転が速くなる。

なぜを考えることを惜しんではいけません。抽象化は汎用的な知見を手に入れる可能性が高まる。抽象的な論理こそ実用的。

よくないのは、情報を集めて調査して、面白いストーリーのネタが見つかるという発想。情報のインプットが多くなるほど、常識が強化する。ストーリーを書く知識は十分、まずは書いてみること。

まずは自分の頭を使って、自分の言葉で、自分だけのストーリーをつくることが先決。自信を持てるだけのストーリーの原型をつくることが大切。ストーリーの原型ができてしまえば、振り回されることなく、試行錯誤を重ねながらストーリーがより強く、太く、長くなるように磨きかけることが大切。抽象化で本質をつかむ。

自分で面白いと思えるストーリーをつくることに尽きるというのが私の意見。思わず人に伝えたくなる話。これが優れたストーリーです。逆にいえば、誰かに話したくてたまらなくなるようなストーリーでなければ、自分でも本当のところは面白いと思っていないわけ。話がとにかく面白い。ストーリーを構想し、組み立てるということは、そもそも創造的で楽しい仕事のはず。何よりも話している本人が面白がって話をしている。

どんな情報に接するときでも、その背後にどういう論理があるのか、whyを考える癖をつけることが大切。簡単にアクセスできる情報には、肝心なwhyが欠落。アクションの背後にある論理は、あくまでも自分の頭で読解。ファクトを漠然と眺めるだけでは、木を見て森を見ず。

戦略思考を豊かにするためには、歴史的方法が最も有効で過去に生まれたストーリーを数多く読み、背後にある論理を読解するということ。ファクトのつながりにまで踏み込んだストーリーを理解し、そこから戦略思考の考えとなる重要な論理をつかむ。

具体的事象の背後にある論理を汲み取って、抽象化することが大切。具体的事象をいったん抽象化することによって、初めて汎用的な知識ベースができる。汎用的な論理であれば、それを自分の文脈で具体化することによって、ストーリーに応用できる。抽象化と具体化を往復することで、物事の本質が見えてくる。ここで大切なことは、思考の推進力はあくまでも抽象化のほうにあるということ。意識的に抽象化しなければ本質はつかめない。

戦略は嫌々考えるものではありません。まず寝食を忘れてしまうほど心底面白いことであれば、いくらでもエネルギーを投入できます。努力が苦痛になりません。